はじめに |
このページは信号処理の応用例の一つとして,声道音響管に基づく母音システムを体験する目的で作成しています。音声合成には種々の方法がありますが,現在は,音声波形を接続する手法が音声合成の主流となっており,音声波形の蓄積,確率・統計的な手法を用いた波形の選択等により合成音声の生成を行っています。
また,結果としての音声波形そのものを利用するのではなく,人間の音声生成過程に基づいた音声合成手法も存在します。人間の音声生成過程は大ざっぱに言えば声帯の振動と,声帯から口唇までの声道における共鳴現象によって達成されます。人間の発話過程を模擬した音声合成手法は,その過程を信号処理の理論を用いることでモデル化し音声の合成を行うもので,人間の振る舞いに近い自然な音声が生成できる手法として期待されています。 現在のところ,人間がどのように発話器官(調音器官,構音器官)をコントロールし意図した音声を生成しているかについては完全に解明されているわけではありませんので,音声生成過程に基づく音声合成手法の実現は容易ではない状況です。今後,生理学的な知見とシミュレーションなどによる工学的な知見とが蓄積され相補的に融合していくことで,より完成度の高い音声合成手法の実現に結びつくと考えられます。 本システムでは,母音合成のプログラムとWeb技術を融合することで,Webブラウザ上から声道形状(断面積)や声帯の制御パラメータを設定し母音の合成音を生成できるアプリケーションを実現しました。システムは,M. M. Sondhi, J. Schroeter 両博士の提案した, "A hybrid time-frequency domain articulatory speech synthesizer" を参考に作成しています。 本システムの開発にあたっては,熊本大学工学部旧園田研究室における研究が基盤となっています。故園田頼信教授,守啓祐先生,大学院生,学部生に感謝いたします。また,Javaによるプログラミングについてご助言いただいた熊本大学総合情報基盤センターの中野裕司教授に御礼申し上げます。学会等で有益なコメント等いただく皆様に御礼申し上げます。本研究の一部は科学研究費補助金による援助を受けたことを記し謝意を表します。 それでは,声道音響管に基づく母音システムを体験してみてください。 参考文献
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